2021/09/03 10:34

森山大道さんの写真集「宅野」(蒼穹舎)は1987年に父方の故郷である島根県邇摩郡仁摩町大字宅野村に墓参に行った際撮られたものです。GALLERYエクリュの森・三島ではご縁をいただき、撮影25年後の2012年に「宅野」展を行いました。


個展を行うにあたり作成したインタビュー集が今回ご紹介するzineです。大道さんと長いお付き合いのあった美術番組のプロデューサーの方がインタビュアだったこともあり、またこの写真集の原点が幼少期の体験だったからでしょうか、「大道さんがこのように素朴な言葉で語るのはあまり聞いたことがない」(蒼穹舎の太田さんの当時の談)というような内容になっています。森山作品のルーツや写真に対する姿勢が丁寧に語られています。

個展の会期中、大道さんを囲んで行われたギャラリートークでは詩人の田中庸介さんをファシリテーターに、画家の川合朋郎さん、作家の間宮緑さんとジャンルの異なる方々によるトークが繰り広げられました。分野の矩を超え、話の中心は四人に共通した「創作」という点に。登壇者それぞれが創作者としてフェアな立場でトークを繰り広げ、そのことを大道さんが喜んでいるという様子が印象的でした。のちにその内容は現代詩手帖の編集長の目に留まり、同誌の2013年11月号に掲載されるに至りました。zineのインタビューも、トークも、大道さんの言葉の力や創作への態度が基盤になっていることを感じます。

インタビューのzineについては個展会場での販売のみであった為、まだギャラリーで保管している分がありました。いつか何かの形で、と思いながら日を過ごしていましたが、ちょうど10年前の秋に個展の準備を始めたこともありこちらのサイトで販売をすることにしました。大道写真にご興味のある方はもちろん、そうでない方も、もっと言えば写真作品全般にご興味のない方もこの一冊を読まれるとなにがしかの発見があるのでは、と思います。またショップには出していませんが、「宅野」写真作品本作も取り扱っていますのでご興味のある方はお問い合わせください。